高分子やポリマーといった用語は化学に携わる仕事をしていると何気なく使っていますが、実はきっちりとした定義が存在しています。
それぞれの定義について紹介したいと思います。
高分子の定義
高分子学会のホームページにしっかり定義が掲載されていますので、引用させていただきます。
なお、高分子学会の定義はIUPACの定義を日本語訳したものであり、国際的に通用する定義です。
まずは前文の高分子とポリマーという言葉の違いについての部分から。
従来、名詞として使われるポリマー(polymer)という語の意味は曖昧であった。すなわち、一般に物質としての“ポリマー”および分子としての“ポリマー”の両方を表すのに用いられている。今後は、高分子(macromolecule)を個々の分子に対して用いる一方、ポリマーを高分子の集合体としての物質を表すのに用いることにする。ポリマーという語は一般に容認されている用法にしたがって、形容詞としても用いることもできる*(たとえば、ポリマーブレンド、ポリマー分子など)。
https://main.spsj.or.jp/c19/iupac/Recommendations/glossary36.html
実は高分子という言葉は、個々の分子に対して用いる言葉なんです。
この定義に基づけば、高分子の分子量分布という言葉は不適当ということになります。(分子量分布は集合体としての性質なのでポリマーの分子量分布という表現が正しい)
一方でポリマーは高分子の集合体としての物質を表す言葉なので、1分子にフォーカスして構造や性質など議論する場合は高分子という言葉を使う必要があるわけです。
そして、高分子の定義として以下のように記載されています。
相対分子質量の大きい分子で、相対分子質量の小さい分子から実質的または概念的に得られる単位*1の多数回の繰返しで構成された構造をもつものをいう。*2
(注)
1. 多くの場合、とくに合成ポリマー分子の場合には、1個あるいは数個の構成単位の増減によってその分子の諸性質が影響を受けるのでなければ、その分子は相対分子質量の大きい分子と見なされる。ただし、高分子の性質がその分子構造の微細部分に強く依存するような特定の高分子*3の場合には上の記述は当てはまらないことに注意する必要がある。
2. 分子の一部または全部が大きい相対分子質量を持ち、且つ分子が相対分子質量の小さい分子から実質的あるいは概念的に得られる単位*1の多数回の繰返しで構成されているとき、それら(分子の一部または全部)はmacromolecularまたはpolymericという形容詞を用いて表現される。また、polymerを形容詞的に用いてもよい。*4
https://main.spsj.or.jp/c19/iupac/Recommendations/glossary36.html
(注釈中の注釈に関しては引用元をご参照ください。)
要は構成単位(繰り返し単位)がちょっと増減したくらいでは物性に影響がない程度に大きい分子のことを指していると考えれば良いでしょう。
「相対分子質量が大きい分子」という部分の定義はあいまいですが、「繰り返し単位の多少の増減が物性に与える影響が非常に小さい」というポリマー特有の性質に着目して高分子の定義をしているわけです。
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