ラジカル重合開始剤の開始剤効率と「かご効果」

ラジカル重合の開始剤(特に熱重合開始剤)は発生したラジカル同士が反応します。

このため、投入した開始剤量から計算されるラジカル量よりも実際に働くラジカルの量は少なくなります。

このような実際に開始剤として働く割合を「開始剤効率」と言います。

開始剤効率は開始剤の種類によって異なります。

アゾ化合物の場合は0.6程度、有機過酸化物系の場合は0.9程度と言われています。

また、開始剤効率は溶媒の影響や重合系の粘度の影響を受けるため、重合系によって差異が発生することもあります。

かご効果

かご効果は発生したラジカルが一定の範囲から抜け出して拡散しないと再度結合してしまう現象のことを指します。

一定の「かご」の範囲から抜け出せないと重合が開始しない、ということです。

有機過酸化物を開始剤として用いた場合は、酸素-酸素結合間のラジカル的開裂は可逆反応であり、かご効果が観測されます。

有機過酸化物から発生したラジカルが一定の「かご」を抜け出したラジカルはモノマーや他の分子と反応していくため、開始剤効率が高くなります。

一方、アゾ化合物を開始剤とした場合はN2の脱離を伴うため、可逆的なラジカルの再結合は起きません。

ですが、発生したアルキルラジカル同士の再結合や不均化の反応を起こすため、広い意味では「かご効果」による影響を受けています。

この反応のため、アゾ化合物系の開始剤は過酸化物系の開始剤に比べて開始剤効率が低くなっています。

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