ラジカル開始剤を使う場合、10時間半減期温度(T10)という指標が用いられます。
この記事では、10時間半減期温度とラジカル開始剤の使用温度について解説します。
10時間半減期温度 T10とは
10時間半減期温度 T10とはその名通り、10時間で開始剤の濃度が半分になる温度です。
ラジカル開始剤は自発的に分解反応が進行するため、おおよそ1次反応の反応速度に従って分解していきます。
このため、10時間半減期温度を見ることでラジカルの発生しやすさが分かります。
例えばAIBNのT10は65℃となっています。
アゾ系の開始剤の場合は溶媒への連鎖移動反応は少ないため、溶媒による影響が小さいです。
一方で過酸化物系は溶媒へ連鎖移動して誘発分解を起こすため、10時間半減期温度は溶媒によって異なることが知られています。
BPOは10時間半減期温度は73.6℃となっていますが、溶媒によっては誘発分解によってT10が変化するので注意が必要です。
また、BPOは100℃付近で急速に分解するため要注意です(誘発分解を起こすため、1次反応の反応速度に従わない)。
1次反応の反応速度について
開始剤は概ね1次反応であるため、比較的容易に分解速度を見積もることができます。
1次反応の反応速度式は以下のようになります。(詳細な導出は割愛)
[A] = [A0]exp(kt)
時間tが経過したときの開始剤Aの濃度[A]は初期濃度[A0]から指数関数的に減少します。
kは反応速度定数で、アレニウスの式が適用できます。
k=Aexp(-Ea/RT)
頻度因子Aと活性化エネルギーのEaはアレニウスプロットから実験的に導出可能です。
開始剤を販売しているメーカーでは、これらの数値を紹介している所もあるので、特定の温度における開始剤の減少を知りたいときには便利です。
特に重合反応を終了する際には重合禁止剤で余った開始剤を潰す(反応しないようにする)必要があり、その際にどの程度の禁止剤が必要になるかを見積もることができます。
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