置換基を有するビニルモノマーから得られるポリマーは置換基の立体配置による構造異性体が存在しています。
例えば、ポリエチレンの場合は二重結合に置換基のないエチレンをモノマーとして用いているので、置換基の立体配置を考える必要はありません。
ですが、ポリプロピレンの場合は二重結合にメチル基が付いており、重合を行うとメチル基の立体配置によって構造が変わります。
このようなポリマー主鎖上の置換基の立体配置(の相対的な配置)のことを立体規則性(タクティシティー)と呼びます。
立体規則性は置換基の立体配置の規則性によって、以下の3つに分類されます。
アイソタクチック(イソタクチック)
置換基の相対配置がすべて同じ向きである高分子です。
ツィーグラー・ナッタ触媒のような金属触媒によるプロピレンの重合を行った場合はアイソタクチックなポリプロピレンが得られます。
アイソタクチックなポリプロピレンの場合、有機化学の考え方では光学異性体が存在するように思えます。
しかし、ビニルモノマーの重合から得られる高分子の場合は左右対称形のため、その光学活性はほとんど打ち消されてしまいます(末端の3級炭素の絶対配置以外は相対的な位置関係に過ぎない)。
このため、光学活性な末端を有し、かつアイソタクチックとなるように高分子を合成しても光学活性を示すことはありません(ただし、末端の光学活性な点を起点に「らせん」のような鏡像異性を有する高次構造を形成するような場合は光学活性を示します)。
シンジオタクチック
置換基の相対配置が「手前、後ろ、手前、後ろ」と交互に並んでいるポリマーです。
ある種のメタロセン触媒を用いてプロピレンの重合を行うと、シンジオタクチックポリプロピレンを合成することができます。
アタクチック高分子
置換基の相対配置がランダムなポリマーです。
ビニルモノマーをラジカル重合して得られるほとんどの高分子はアタクチックな高分子になります。
ラジカル重合では付加反応の際に立体的な配座を制御することが難しく、置換基の相対配置がランダムになります。
立体規則性が違うとポリマーの物性も変わる
立体規則性はポリマーの物性にも影響します。
例えば、アイソタクチックポリプロピレンは結晶性の高分子ですが、アタクチックポリプロピレンは結晶性はありません。
これはポリマーの立体構造が規則的だと、ポリマー同士が整列しやすく結晶化しやすいことを表しています。
世の中に出回っているポリプロピレン樹脂はアイソタクチックのポリマーで、結晶性が高い方がポリマー(材料)としての性質が優れています。
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