ラジカル重合は重合反応の中でも非常に広く利用されている重合方法です。
ほとんどのビニル系モノマーを容易に重合できるという点で工業的にも利用しやすい重合法です。
この記事ではラジカル重合の基本的な内容について紹介します。
ラジカル重合とは?
ラジカル重合は反応の活性種が「ラジカル」である重合反応です。
ラジカルは非常に反応性の高い化学種です。
ビニル化合物の付加重合でラジカルが活性種となる反応がほとんどです。
ラジカル重合ではモノマーとしてビニル化合物、開始剤としてラジカルの発生する化合物を用います。
ラジカルの作用によって二重結合が単結合になることで重合が進行していきます。
ラジカル重合は主に4つの反応からなります。
開始反応
ラジカル重合の最初のステップになります。
開始剤からラジカルが発生し、それがモノマーに付加する反応です。
開始剤としては有機過酸化物やアゾ化合物が用いられます。
これ以外にも酸化還元反応や光反応を利用した開始剤もあります。
成長反応
次にラジカルがモノマーに付加する成長反応です。
ポリマーの成長末端がモノマーに付加して重合度が上昇していきます。
停止反応
ラジカルは非常に反応性の高い化学種のため、ラジカル同士が衝突するなどして停止反応が起こります。
すなわつラジカル反応では成長反応はずっと続くわけでなく、ポリマーの成長が止まる(つまりラジカルが失活するような)停止反応が起こります。
ラジカル同士の衝突で停止する場合は「不均化」と「再結合」のどちらかの反応が起こります。
不均化は形式的には二つのラジカル成長末端間で水素ラジカルのやり取りが起こる反応です。
片方の成長末端に二重結合が生成します。
再結合はラジカル同士がカップリングして結合を生成します。
どちらの反応が発生しやすいかはモノマーや反応条件によって変化します。
また、以下で紹介する連鎖移動反応も実質的な停止反応となる場合があります。
連鎖移動反応
成長末端のラジカルは他の分子に連鎖移動反応を起こす場合があります。
例えば、スチレンのラジカル重合反応の溶媒にトルエンを用いていた場合、以下のような連鎖移動反応が発生することがあります。
成長末端がトルエンの水素を引き抜いて、代わりにトルエンのメチル基にラジカルが移ります。
このような反応を連鎖移動反応と呼びます。
トルエンに連鎖移動したラジカルは再度スチレンのラジカル重合反応を開始させる能力があるため、重合反応は停止しません。
なお、ラジカル重合を開始させる能力がないものに連鎖移動した場合は実質的な停止反応になります。
例えば、トリフェニルメタンを添加して連鎖移動させた場合は生成するトリフェニルメチルラジカルが非常に安定であり、スチレンへの付加反応を起こしません。
ラジカル重合の代表例
ラジカル重合の代表的な例はビニルモノマーの重合が挙げられます。
例えば、メタクリル酸メチルをAIBNを開始剤として用いて重合するとポリメタクリル酸メチルが得られます。
他にも酢酸ビニルをAIBNを開始剤として用いて重合するとポリ酢酸ビニルが得られます。
ラジカル重合のメリット
ラジカル重合のメリットは非常に多くのビニルモノマーを重合できる点です。
ラジカルは反応性の高い化学種である一方で、官能基許容性が高いという特徴を持ちます。
このため、極性基を有するアクリル酸やメタクリル酸メチル、酢酸ビニルなどのモノマーも重合することができます。
また、ラジカルは水の存在下でも失活しにくいため、懸濁重合や乳化重合のような水中に分散させた状態でもラジカル重合ができます。
重合関連の書籍
ラジカル重合の基礎について解説しました。
ラジカル重合は工業的にも広く利用されている重合法で汎用性の高い重合方法です。
高分子関連では以下の本が基礎的なことが一通り書かれています。
コメント