工業的に用いられている重合方法の中で「乳化重合」という手法は、粒径を制御したポリマー粒子や高分子量のポリマーを合成するのに非常に有効な方法です。
乳化重合は、乳化剤を用いて水中にモノマー液滴を分散させ、水に溶解する開始剤を用いてポリマーの重合反応を進行させるプロセスです。
本記事では、乳化重合の基本的な特徴と利点について解説します。
乳化重合の特徴
乳化重合は他の重方法法にない特徴があり、工業的にも利用されています。以下に乳化重合の特徴を詳しく見ていきましょう。
乳化重合の方法
乳化重合は、水中にモノマー液滴を均一に分散させることから始まります。このために、一般的に乳化剤(界面活性剤)が使用されます。モノマー液滴が均一に分散されることにより、ポリマー粒子が得ることができます。
また乳化重合は、水に溶解する開始剤を使用するため、開始反応によるラジカルの生成は水相で進行します。この点が乳化重合において重要であり、懸濁重合との大きな違いになります。
水中に生成されたラジカルがモノマー液滴内で反応を起こすことにより、ポリマーの成長が始まります。
高分子量のポリマー合成
乳化重合の最大の特徴の一つは、モノマー液滴内でのラジカル生成が水相からの供給に依存するため、ラジカル供給が制限されることです。
これにより、モノマー液滴内のラジカルが非常に少なくなり、適切な条件下では高分子量のポリマーが得られます。
熱の除熱が容易
乳化重合は水中で行われるため、塊状重合に比べると反応熱の除熱が容易です。これにより、重合中の反応を制御しやすいというメリットがあります。
粒子の制御と取り出し
乳化重合で得られたポリマー粒子はそのまま水分散液として取り出すことができます。また、粒子径や凝集状態を制御することで、粉体として取り出すことも可能です。
ただし、凝集状態の制御が不十分だと、粒子同士の凝集や分散が狙った通りに進行しません。これによって大きな塊になったり、逆に粉塵のようになり、取り扱いが難しくなる場合があるため、注意が必要です。
まとめ
乳化重合は、高分子量のポリマーや粒径の制御されたポリマー粒子を合成するための有力な方法として広く利用されています。
また、水を使用した重合方法であり、添加剤も乳化剤だけであることから、実験室レベルの重合においても実施しやすい重合方法であると言えます。
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