ポリマーの分子量分布を測定する手段としてGPC(Gel Permeation Chromatography)が広く使用されています。
この記事ではGPCの原理について紹介します。
GPCの原理
GPCのカラム内には多孔質のゲルが充てんされています。
この中を展開溶媒に溶解した高分子試料が通過していきます。
この際に、大きな分子はカラム内で多孔質の部分にトラップされないためにすぐにカラムから出てきます。
一方で小さな分子は多孔質部分にトラップされてカラムから出てくるのに時間がかかります。
このような仕組みを利用して、分子の大きさを判定しています。
GPCは分子サイズで分離されるクロマトグラフィーなので、SEC(Size Exclusion Chromatography)とも呼ばれています。
標準物質のと比較
カラムから出てくる時間(流出時間)で「分子の大きさのふるい分け」ができるわけですが、どの時間に出てきたら、どれくらいの大きさか?ということが分かりません。
そこで標準物質をあらかじめ測定しておき、そのデータで較正曲線を作成することで流出時間と分子量の相関が分かります。
標準物質としてはポリスチレンが用いられることが多いです。(他にもPMMAやPEGなども使われることがあります。)
GPCでは標準物質の数値から分子量を計算することが多く、その場合は標準物質に対する換算分子量になります。
GPCは流体力学的半径で分離される
GPCは簡便に分子量や分子量分布を測定できるメリットがありますが、測定の原理上、いくつかの注意があります。
中でも気を付けておく必要があるのは、GPCによる「分子のふるい分け」は流体力学的半径Rhで行われているということです。
流体力学的半径Rhは高分子の大きさを表す指標ですが、分子量と1:1の関係にはありません。
例えば、同じ分子量の高分子であったとしても、高分子主鎖中に分岐を有する場合と、直鎖上の高分子では流体力学的半径は異なります。
このため、GPCで測定した分子量は必ずしもそこの高分子の持っている分子量を正確に測定しているわけではない点に注意が必要になります。
絶対分子量を測定する場合は別の方法も併用する
GPCでの測定はそもそも換算分子量でしか測定できない(同一の構造の標準物質で較正しない限り)ので、絶対分子量を測定する場合には他の方法を利用することになります。
そこで、GPCで出てきた溶出液を光散乱法という方法で連続的に測定する手法(GPC-MALS)で絶対分子量を出す方法もあります。
光散乱法を用いれば絶対分子量(重量平均分子量)を測定することができるため、GPCと併用することでどのような分子量を持ったものがどの時間に溶出されたのかが分かります。
GPCでは「分子サイズ」の情報しかありませんが、MALS(多角度光散乱法)を併用すればより正確な分子量測定が可能になるわけです。
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